アイちゃんというキャラクターが半世紀にわたり生命力を失わなかった背景には、各時代を代表する表現者たちの卓越したアプローチが存在します。1977年のオリジナル版、2008年のフルリメイク版、そして2009年の実写映画版それぞれにおいて、異なる魅力が注ぎ込まれました。
初代声優を務めた岡本茉莉は、可憐で温かみのある声質の中に、芯の強さを感じさせる名演を披露しました。当時の演出陣による証言資料によると、総監督の笹川ひろし氏は「単なるお人形のような可愛い少女ではなく、下町の親しみやすさと少女らしい生活感を声に乗せてほしい」と要望したとされています。岡本は時にドジを踏むガンちゃんを叱咤激励しつつ、甘酸っぱい恋心を滲ませる絶妙な匙加減で「理想のガールフレンド像」を確立しました。
31年の時を経て制作された2008年リメイク版では、実力派声優の加藤英美里がバトンを引き継ぎました。加藤はオリジナル版への最大限のリスペクトを払いつつ、2000年代以降のアニメファンにも響くテンポの良いキュートさと、コミカルな感情起伏をダイナミックに表現。とりわけガンちゃんが敵ボスのドロンジョに鼻の下を伸ばした際に見せる、鋭いツッコミと嫉妬の演技は作品の大きな牽引力となりました。
さらに2009年、三池崇史監督がメガホンを取った実写映画『ヤッターマン』では、女優の福田沙紀がアイちゃん役に抜擢されました。櫻井翔演じるガンちゃんとの息の合った掛け合いに加え、精巧に再現された本革仕様の特注スーツを身に纏い、本格的なワイヤーアクションに挑戦。製作発表記者会見で福田が「子どもの頃から知っている国民的ヒロインを演じる重圧はあったが、体当たりのアクションで彼女の活発さを表現したい」と語った通り、実写ならではの躍動感あふれるヒロイン像を具現化しました。