福田和子の逃避行において最も異様な局面として知られるのが、石川県輪島市での潜伏劇だ。整形手術を繰り返し、顔を変えた福田は、老舗和菓子店の主人に入り込み、内妻の座に収まった。
この時、長男は福田の「甥(おい)」という名目で店に呼び寄せられ、一緒に暮らすことを強要された。目の前にいる実の母親を「おばさん」と呼び、他人の目を欺き続ける日常。近所の人々からは「真面目で手伝いをよくする良い青年」と評されていたが、その内面は常に引き裂かれていた。実母の犯罪を知りながらも逃げることもできず、共犯者と被害者の狭間で葛藤する毎日は、拷問に等しいものだったと言える。