筆を執る作家としての役割にとどまらず、彼女は漫画という文化そのものを次代へ手渡すための制度設計にも深く関わってきた。その象徴が、京都精華大学での教育活動である。2000年に同大学の教授に就任し、のちに学長も務めた彼女は、漫画を体系的な学問・芸術として教える環境を日本で初めて本格的に整備した。
感覚的な才能論に逃げず、コマ割りやペンのストロークを論理的に言語化する指導法は、国内外から集まる若いクリエイターたちに大きな影響を与えた。同時に、日本漫画家協会の要職などを通じて、漫画家の権利擁護や労働環境の改善にも力を尽くしてきた。
さらに、劣化しやすい直筆原画の保存・活用を目指す「原画'(ダッシュ)」プロジェクトを主導。高度な複製技術を用いて原画の美しさを半永久的にアーカイブする試みは、文化遺産としての漫画を未来に残すための重要な布石となっている。