お茶の間では「おバカキャラ」や「木久蔵ラーメン」の自虐ネタで愛された林家木久扇だが、一歩寄席に足を踏み入れれば、落語協会の最高顧問を務める正真正銘の重鎮である。テレビで見せる軽妙洒脱な姿の裏には、名人・三遊亭圓生や林家彦六(八代目林家正蔵)から直に叩き込まれた古典落語の強靭な骨格が存在する。
ラーメン事業の失敗談や突飛な投資話すらも全て落語のまくら(導入)として昇華し、客席を抱腹絶倒の渦に巻き込む。日常の挫折をそのまま極上の芸に変えてしまう錬金術こそ、木久扇落語の真骨頂だ。
どんな困難に見舞われても、高座に上がれば満面の笑みで客を包み込む。テレビタレントとしての名声に甘んじることなく、常に一人の噺家として座布団に向き合い続けた姿勢こそが、演芸界全体から彼が深く敬愛される最大の理由に他ならない。