長年、脳と免疫系はそれぞれ独立して機能していると考えられてきた。しかし、近年の解剖学および分子生物学の研究は、その常識を完全に覆した。脳の視床下部や扁桃体で生じた感情のシグナルは、自律神経の太い幹である迷走神経を経由し、数ミリ秒という圧倒的なスピードで全身の免疫器官へと伝達される。
特に注目されているのが「脳腸相関」の視点だ。腸管には全免疫細胞の約70%が集中しており、脳が強いストレスを感じると、腸内環境は一瞬でバランスを崩す。2025年末に発表された国内最大規模のコホート研究でも、抑うつ傾向の高いグループは腸内の有用菌が有意に減少し、全身性の微小炎症リスクが高まることが実証された。