お品書きの隅々を眺めても載っていない、あるいは常連の間で密かに語り継がれている裏メニューや通な注文方法が存在する。文豪たちも好んで頼んだとされるのが、特製の出汁で煮込んだ鳥わさや、季節限定の特別な素材を使った種ものだ。シンプルながらも洗練された職人の出汁使いが、素材の旨味を極限まで引き出している。
さらに、常連客の多くは蕎麦の茹で加減やツユの濃さを自分の好みに合わせて細かくリクエストする。例えば、冷たい蕎麦を温かい汁で味わう変則的な頼み方や、あえてツユを付けずに塩だけで蕎麦の香りを堪能する食べ方など、個々のこだわりに柔軟に応えてくれる懐の深さも魅力だ。型にハマらない自由な楽しみ方こそ、長年愛され続ける真の理由だろう。