問題の背景にあるのは、第二次世界大戦中に旧日本陸軍に実在した「731部隊」(関東軍防疫給水部)を巡る歴史の傷痕だ。同部隊は戦時中、人体実験の被験者となった人々を暗号名で「マルタ(丸太)」と呼んでいた歴史的事実がある。作中で非倫理的な人体実験を繰り返す悪徳医師にこの名前が冠されたことで、被災国や歴史的文脈に敏感な海外読者の間で「歴史的犠牲者への侮辱だ」との怒りが瞬く間に燃え上がった。
SNSを中心に批判の声は瞬く間に拡散された。海外ファンの間では不買運動や不満を示すハッシュタグがトレンド入りし、炎上は国際的なニュースとして報じられる事態へと拡大。たとえ作者側に他意がなかったとしても、現実の惨劇を想起させる名称と作中設定の奇妙な一致が、読者に深いトラウマと不快感を与えてしまったのは動かしがたい事実だった。