果実の形を美しく保ちながら、芯まで芳醇な香りを染み込ませるには何が必要なのか。取材に応じたシェフが明かしたのは、赤ワインとグラニュー糖、そしてスパイスの「黄金比率」だ。ベースとなる液体は赤ワイン300mlに対して水100ml、グラニュー糖80g。そこにシナモンスティック半本、スターアニス(八角)1個、クローブ2粒、そして無農薬レモンの皮をわずかに加える。
そして最大の核心が、煮崩れを防ぐ「ペクチン定着の裏技」だ。多くの人がイチジクをいきなり沸騰したシロップに投入してしまうが、これは大きな過ちである。果皮を薄く剥いた後、60度前後の低温シロップで静かに5分ほど泳がせ、一度火を止めて完全に冷ます。この「急激な温度変化を与えず、予熱と浸透圧で味を含ませる」プロセスこそが、形を崩さずに宝石のようなツヤと弾力を残す決定的な秘訣なのだ。