日本の映画史において、主演女優という存在の重みを語る上で吉永小百合の名を外すことはできない。数多の記録を打ち立て、銀幕の気品を体現し続けてきたその足跡は、いわば日本映画の正統派クラシシズムの象徴だ。凛とした佇まいと内に秘めた情熱で世代を超えて人々を魅了し続ける姿勢は、いまなお多くの後進にとって目指すべき灯台となっている。
一方で、近年の映画界に地殻変動を起こしたのが安藤サクラの存在だ。彼女が体現する、予定調和を軽快に裏切る野生味と、剥き出しの人間臭さ。端正な美しさをなぞるのではなく、感情の歪みや泥臭さをそのままスクリーンに焼き付けるそのアプローチは、旧来のヒロイン像を鮮やかに解体してみせた。今回の受賞劇もまた、この偉大な先人たちが築き上げた古典的風格と、現代的なリアリズムの革新という二つの大きな潮流の延長線上に位置づけられる。