かつて昭和から平成初期のグルメバラエティといえば、豪華なスタジオセットに高額食材を並べ、審査員やタレントが大げさなリアクションを取るスタイルが主流でした。しかし、SNSの普及と個人の価値観の多様化に伴い、視聴者が求める要素は劇的に変化しています。
特に深夜グルメ番組というジャンルを確立したテレビ東京グルメドラマ群は、その先駆者と言えます。井之頭五郎が淡々と一人飯を平らげる姿に代表されるように、「誰にも邪魔されず、気を使わずに好きなものを食べる」という行為そのものが、多忙な現代人にとって至高のセラピーとして機能しています。
一方で、土日やゴールデン帯を席巻するご当地グルメ番組や週末グルメ旅番組では、「地元住民との偶発的な出会い」が最大のフックとなっています。事前にリサーチされた観光地ではなく、地元のタクシー運転手や通りがかりの住人が普段通っている定食屋や町中華が主役になることで、視聴者は予定調和ではないリアルな旅情を疑似体験できるのです。