ネット上や健康情報で長年語り継がれてきた「ウォーキング20分意味ない噂の真相」にメスを入れると、古典的な実験データの解釈ミスが浮かび上がる。かつて運動生理学において「運動開始後20分を経過すると脂肪燃焼効率が急激に高まる」と報告された事実が、いつの間にか曲解され、「20分未満は脂肪が一切燃えない」という極端な都市伝説へと変質してしまった。
人体の脂肪燃焼メカニズムにおいて、エネルギー源となる血中グルコース(糖質)と遊離脂肪酸(脂質)は、運動の強度や経過時間に応じて利用比率がグラデーションのように変化する。安静時から歩行を開始した瞬間であっても、エネルギーの一定割合は脂肪から供給されており、20分未満の歩行が無駄になることは生化学的にあり得ない。
20分という時間は、糖質主体の利用から脂質主体の利用へと「エネルギー供給比率の主役が交代する交差点」に過ぎない。わずか10分や15分の歩行であっても骨格筋はしっかりとグリコーゲンを消費し、脂肪酸を酸化させている。したがって、「20分しか取れないから歩かない」という選択は極めて損失が大きく、短時間であっても確実に脂肪代謝のスイッチは入る。