かつて愛知県内には、三河から尾張にかけて数千坪クラスの敷地を誇る健康ランドが林立していました。なぜこれほどまでに淘汰が進み、24時間営業の維持が難しくなったのか。その愛知健康ランド閉店理由を探ると、単なるサウナブームの変遷にとどまらない、温浴ビジネスの構造的疲弊が見えてきます。
第1の要因は、エネルギーコストと人件費の爆発的上昇です。24時間営業を維持するためには、深夜帯もボイラーを稼働させ続け、浴槽の循環ろ過と水質管理を行い、受付や清掃、防犯警備のスタッフを夜勤手当付きで配置し続けなければなりません。2022年以降の原油・天然ガス価格の高騰および電気代の引き上げは、巨大な空間を温め続ける大型健康ランドの収益構造に致命的な打撃を与えました。
第2の要因は、「日帰りスーパー銭湯」と「格安ビジネスホテル」による挟み撃ちです。2000年代以降、キャナルリゾートや竜泉寺の湯のような高付加価値型スーパー銭湯が台頭し、「昼から深夜まで温泉と岩盤浴、グルメを楽しんで自宅に帰る」というライフスタイルが定着しました。同時に、名古屋駅や金山駅周辺には1泊6,000円〜8,000円前後で清潔な個室と大浴場を備えた宿泊特化型ホテルが林立。中途半端に4,000円〜5,000円を払って大部屋で雑魚寝する健康ランドの立ち位置が急速に失われたのです。
その結果、施設老朽化に伴う数億円規模の改修工事を前にして廃業を決断する事業者が相次ぎました。現在残っている施設は、ホテル事業(湯〜とぴあ宝併設の名古屋笠寺ホテルなど)との高度な連動や、圧倒的なサウナ特化型ブランドを確立できた勝ち組企業のみという現実があります。