前頭側頭型認知症の初期において、最も周囲を戸惑わせるのが劇的な性格変化です。これまで温厚で気配りができていた人が、些細なことで激昂したり、他人の痛みに全く無関心になったりします。
この変化が生じる理由は、人間の理性、共感性、衝動の抑制を司る大脳の「前頭葉」および言語や記憶の意味を司る「側頭葉」が変性・萎縮するためです。病理学的には前頭側頭葉変性症という広範な疾患群に分類され、かつて「ピック病」と呼ばれていた病態もこの中に含まれます。
初期症状として目立つのは、以下のような脱抑制(ブレーキが効かなくなる状態)と自発性の低下です。
- 反社会的・脱抑制行動:万引き、信号無視、人前での脱衣など、社会通念に反する行為を悪気なく行う。
- 感情の平板化・共感の喪失:身内の不幸にも悲しまず、他者への思いやりが完全に失われたように見える。
- 我が道を行く行動:周囲の状況を無視し、自分勝手な振る舞いを押し通す。
これらは「性格が歪んだ」のではなく、脳のブレーキ機能そのものが物理的に壊れてしまっている現象です。