ネット上の掲示板や一部の論調において、水戸芸術館のようなバブル期に構想された大規模施設は「莫大な税金を投じた地方のハコモノ行政の典型ではないか」というステレオタイプな批判にさらされることがあります。しかし、この言説は実態を著しく見誤っています。
水戸芸術館が全国の公立施設と一線を画しているのは、「建物(箱)を作ってからコンテンツを考えたのではなく、実現したい芸術運動のために建物が設計された」という点です。磯崎新は設計段階から吉田秀和ら専門家と徹底的な議論を重ね、美術展示室の照明の角度、コンサートホールの吸音率、劇場の客席勾配に至るまで、実演者と鑑賞者のニーズを極限まで反映させました。多くの地方ホールが稼働率を上げるために多目的ホール化して音響を台無しにする中、水戸芸術館は「専用空間」を頑なに守り抜きました。その結果、世界中の一流アーティストが「水戸で演奏したい、展示したい」と熱望する循環が生まれ、30年以上にわたり驚異的な稼働実績と評価を維持し続けているのです。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
建築・文化施設としての完成度が極めて高い水戸芸術館ですが、来訪目的によって満足度は異なります。
- 強くおすすめできる人:
- 世界的建築家・磯崎新のポストモダン建築の最高傑作をディテールまで肌で体感したい人
- 現代アートの先鋭的な表現に触れ、知的な刺激や新しい視点を得たい人
- 一流の音響空間で、演奏者と一体となる濃密なクラシック音楽を堪能したい人
- 慎重になるべき人(訪問方法の工夫が必要な人):
- 「いわゆる観光名所的な大パノラマの絶景」のみを展望タワーに期待している人(タワーは丸窓から風景を切り取る構造のため、360度ガラス張りの開放感を求める場合はギャップを感じやすい)
- 事前の公演予約や展覧会の会期・休館日を確認せず、当日飛び込みで本格的な舞台やコンサートを鑑賞できると考えている人