クランブル(crumble)という言葉は、英語の動詞で「細かく砕く」「ぽろぽろと崩れる」を意味します。製菓分野においては、小麦粉・冷たいバター・砂糖をすり合わせ、そぼろ状(粒状)にした生地、あるいはそれをフルーツの上に乗せて焼き上げた焼き菓子そのものを指します。
その歴史を紐解くと、イギリス伝統菓子としての発祥は1940年代、第二次世界大戦下の食糧配給制度に遡ります。当時、パイ生地を折り込むために必要な大量のバターや小麦粉、卵を確保することは極めて困難でした。そこで、限られた配給物資の中で工夫を凝らし、少量の油脂と粉を指先ですり合わせて果物の上に散らし、オーブンで焼いたのが始まりです。
手間のかかるパイ生地の代用品として生まれたクランブルは、その手軽さと素朴なおいしさから瞬く間にイギリス全土の家庭へ定着しました。戦後復興を経て豊かになった現代でも、耐熱皿に敷き詰めた果汁あふれるリンゴと合わせた「アップルクランブル」は、英国を代表する国民的コンフォートフードとして愛され続けています。