行政が実施する「1歳半健診(乳幼児健康診査)」では、問診票や診察室の観察項目に「積木を積む」「指差しをする」と並んで、「コップで飲む真似をするか」「簡単な見立て遊びをするか」が含まれている自治体が多く存在します。
そのため、知恵袋や子育てコミュニティには連日切実な声が投稿されています。
「1歳6か月健診の問診で『見立て遊びをしますか』にいいえと答えたら、保健師さんに様子見と言われて不安で押しつぶされそう」「ブロックを並べるだけで、何かに見立てて遊ぶ気配が一切ない」
インターネット上では「見立て遊びをしない=自閉スペクトラム症(ASD)の兆候」という短絡的な情報が散見されますが、現場の小児科医や発達相談員の診断基準はそこまで単純ではありません。見立て遊びが見られない背景には、多様な要因が存在します。
見立て遊びをしない・遅れている主な理由
- 探索遊び(感覚運動遊び)への強い没頭:物を落としたときの重力変化、隙間に物をはめ込む構造の確認など、物理的・空間的な探求に強い関心がある時期は、象徴的な見立てに関心が向きにくい。
- 大人の行動を見る機会の差:日常的にスマートフォンの操作やテレビの画面に触れる機会が多く、昔ながらの「固定電話の受話器を持つ」「急須でお茶を注ぐ」といった象徴的な家庭内動作を目にしていない。
- 道具の機能理解が進行中:「スプーンは食べる道具」「靴は履くもの」という本来の用途を認知する過程にあり、あえて別物に見立てる遊びへステップアップする前段階にある。
発達障害(ASD)のサインと捉えられるケースの見極め
小児神経科医や臨床発達心理士が注視するのは、単に「見立て遊びをするか否か」という点ではなく、「共同注意(指差しや視線の共有)」や「模倣の意欲」が存在するかどうかです。
もし見立て遊びをしなくても、親が「見て!」と指差した方向を一緒に見たり、大人の笑顔に微笑み返したり、拍手やバイバイといった身振りを真似できているのであれば、社会的なコミュニケーションの土台は着実に育っています。一方で、以下のような傾向が重複して見られる場合は、専門機関(地域の発達支援センターや小児科)へ相談する一つの目安となります。
- 呼びかけに対して目が合いにくく、大人の指差し先を振り返らない
- 物を機能や役割で捉えるのではなく、車のタイヤだけを延々と回し続けたり、ミニカーを一列に並べることだけに極端に固執する
- 身振りの模倣(バイバイ、パチパチ)を全く示さない
- 他者の存在を意識せず、大人の手を道具のように使って要求を通そうとする(クレーン現象)
発達には個人差があり、1歳半の時点で全く見立てをしなかった子が、2歳を過ぎて言葉の語彙が増えた途端に急激におままごとを始める例は日常茶飯事です。一時期の断面だけで過度な不安を抱え込まない姿勢が欠かせません。