発行枚数の少なさによるプレミアを遥かに凌駕するのが、製造現場の過誤によって生じる「エラーコイン」の世界だ。造幣局の技術は世界最高水準を誇り、光学センサーや重量検査など何重もの厳格な検品体制が敷かれている。そのため、規格外の不良品が検査をすり抜けて市中に出回る確率は数百万分の1、あるいは数千万分の1とも言われる奇跡的な確率である。
その中でも、構造的にエラーが発生しやすい特性を持つのが50円玉だ。100円玉や10円玉と異なり「中央に穴をあける(穿孔)」という専用の工程が存在するため、穴に関する不具合が極めて発生しやすいのである。主なエラーの種類と買取現場での実勢価格は以下の通りだ。
第一に、最も知名度が高くコレクターの争奪戦が起きるのが50円玉穴ズレ買取価格の跳ね上がりだ。これは円形板に穴を開けるタイミングやプレス位置が狂ったことによって生じる。ズレの幅がミリ単位で大きければ大きいほど価値は幾何級数的に跳ね上がり、縁(フチ)のすぐそばまで穴が偏っているような極端な個体であれば、1枚あたり5万円〜20万円という途方もない査定額が提示される。
第二に、検品をすり抜けた究極の珍品とされるのが「穴なし硬貨」だ。穴を開ける工程そのものを完全にスキップしてプレスされたもので、穴なし50円玉エラーコイン相場は状態や年代にもよるが20万円〜40万円以上に達することが珍しくない。オークションに出品されれば、コイン収集家のみならず実物資産を求める投資筋からも激しい入札が入る。
第三に、肉眼では一瞬見落としがちなのが50円玉角度ズレ高額買取の対象となる傾きエラーだ。硬貨の表面(菊の図案と「五十円」の文字)に対して、裏面(「50」の数字と製造年)が正常な180度反転の位置から時計回りまたは反時計回りにズレて刻印されているものを指す。ズレ角度が30度、45度、あるいは真横(90度)を向いているような極端な個体では、数万円規模のプレミアムが確定する。これらはいずれも、造幣局が「本来は世に出してはならない不良品」であるからこそ、市場で凄まじい希少価値を獲得しているのである。