街で見かける「サインポール(赤・白・青の回転看板)」が目印の理容室と、トレンドを発信する美容室。両者の決定的な差異は、根拠となる法律と目的の定義にあります。
日本の公衆衛生法規において、理容室は理容師法、美容室は美容師法という別々の法律によって厳格に管理されています。理容師法第1条の2では、理容を「頭容を整えることによって容姿を整容すること」と定義。一方、美容師法第2条では、美容を「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定めています。つまり、床屋は「容姿を整える(マイナスを整えて清潔にする)」ことを目的とし、美容室は「容姿を美しく飾る(プラスの装飾を加える)」ことを目的としている点に、美容室と理容室の違いにおける法律上の理由が存在します。
多くの利用者が疑問を抱く「床屋と美容室で顔剃りができない理由」も、この法的定義に直結しています。厚生労働省の通達によると、カミソリの刃を直接肌に当てて行う本格的なシェービング行為は、理容師法に定める「理容」の専管業務です。美容師が認められている顔剃りは、「化粧に附随する軽微な顔そり(眉周りの産毛を電気シェーバーなどで軽く整える程度)」に限定されており、一枚刃のカミソリを用いて顔全体のヒゲや産毛を剃る行為は違法となります。
この業務範囲の違いは、取得する美容師と理容師の国家資格の違いにも色濃く反映されています。養成施設のカリキュラムにおいて、理容師はカミソリの運行技術や刃の消毒法、皮膚構造、緻密な刈り上げ(ブロースやミディアムカット)を徹底的に叩き込まれます。対して美容師は、ワインディング(パーマ巻き)やヘアカラーの薬剤知識、アップスタイルなどの造形美を追求する試験内容となっており、育成プロセスの段階から目指す専門技術が根本から異なっています。