中学1年生の地学分野および高校入試において、全国の受験生が必ずと言っていいほど直面するのが「地震の計算問題」です。この単元の成否を分ける重要概念が初期微動継続時間であり、それを数学的に定式化したのが日本の地震学の父・大森房吉博士が考案した大森公式(Omori formula)です。
初期微動継続時間(PS時間とも呼ばれます)とは、P波が到達してからS波が到達するまでの時間差(秒)を指します。P波とS波は震源を同時に出発しますが、足の速いP波が先に着き、遅いS波が後から追いかけてきます。したがって、震源からの距離が遠くなればなるほど、2つの波の到着時間差(初期微動継続時間)は比例して長くなるという単純明快な幾何学的ルールが成立します。
この関係を表した大森公式の基本形は以下の通りです。
D = k × t
・D(Distance):震源までの距離(km)
・t(time):初期微動継続時間(秒)= S波到達時刻 − P波到達時刻
・k:大森係数(地殻の材質や岩盤の密度によって決まる定数。日本列島では約6〜8 km/s)
なぜこの式が導かれるのか、速度の引き算から論理的に理解しておくと丸暗記の罠に陥りません。P波の速度を $V_p$、S波の速度を $V_s$、震源距離を $D$ と置いた場合、それぞれの到達にかかる時間は距離÷速さで求められます。
$$t = \frac{D}{V_s} - \frac{D}{V_p} = D \left( \frac{V_p - V_s}{V_p \cdot V_s} \right)$$
これを震源距離 $D$ について解き直すと、次の形になります。
$$D = \left( \frac{V_p \cdot V_s}{V_p - V_s} \right) \times t$$
この括弧内の定数部分こそが、大森係数 $k$ の正体です。例えば、テストで「P波の速度が6km/s、S波の速度が3.5km/sの地域で、初期微動継続時間が8秒だった場合、震源距離は何kmか」と問われた場合、大森係数は $(6 \times 3.5) \div (6 - 3.5) = 21 \div 2.5 = 8.4$ となり、震源距離は $8.4 \times 8 = 67.2\text{km}$ と瞬時に導き出せます。試験現場では、グラフの傾きからP波とS波の速度をそれぞれ読み取らせる複合問題が頻出するため、単位の取り違え(分と秒の換算ミス)には細心の注意を払う必要があります。