鼻の奥から漂う独特の悪臭の正体は、副鼻腔という閉鎖空間で繰り広げられた「免疫系細胞と病原細菌の死闘の痕跡」です。 顔の骨の中には、鼻腔を取り囲むように「副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)」と呼ばれる4種類の空洞が存在します。通常、副鼻腔の内面は繊毛上皮で覆われ、微量の粘液によってウイルスや埃を「自然口」と呼ばれる小さな排泄穴から鼻腔へと排出しています。しかし、風邪のウイルス感染やアレルギー反応によって鼻の粘膜が急激に腫れ上がると、この自然口が完全に塞がれてしまいます。 出口を失った副鼻腔は、体温37度前後の暗く湿った「密閉培養室」と化します。ここに肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、さらには酸素を嫌う嫌気性菌が侵入して爆発的に増殖します。生体の防御システムはこの細菌感染を鎮圧するため、大量の好中球(白血球の一種)を副鼻腔内へと送り込みます。 好中球が細菌を貪食して死滅する際、好中球自身が持つ酵素(ミエロペルオキシダーゼ)が放出されます。この酵素こそが、無色透明だった鼻水をドロドロとした黄色や黄緑色の膿へと変色させる主因です。 さらに、酸素が遮断された洞内で優勢となった嫌気性菌(ペプトストレプトコッカス属やフソバクテリウム属など)は、膿に含まれるタンパク質を貪食・分解します。その過程で生成されるのが、以下の強烈な悪臭物質です。 * メチルメルカプタン:野菜の腐敗臭やタマネギが腐ったような刺激臭 * 硫化水素:卵が腐ったようなドブ・下水系の悪臭 * イソ吉草酸:蒸れた靴下やチーズが酸化したような酸鼻を突く臭い * トリメチルアミン:魚が腐乱したような生臭い腐敗臭 黄色くネバネバした鼻水が生臭いのは、白血球の死骸と嫌気性菌が産生したこれらのガスが濃厚に溶け込んでいる物理的な証拠です。単なる鼻炎ではなく、鼻の骨の空洞が「膿の溜まり場」になっているからこそ、通常の鼻風邪とは次元の異なる異臭が鼻の奥から立ち上り続けるのです。
副鼻腔炎の臭いは周りにバレる?鼻の奥の悪臭原因と正しい治し方
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