羽アリの発生には、気象条件と生態サイクルに裏打ちされた明確なトリガーが存在する。日本本土に広く分布するヤマトシロアリの場合、羽アリ発生時期は4月中旬から5月下旬の約1か月間に集中する。特に「前日にまとまった雨が降り、翌朝に気温が急上昇した、風の弱い蒸し暑い日の午前10時から正午前後」というピンポイントの条件下で、一斉に飛び立つ性質を持つ。
羽アリが室内で見つかった場合、侵入経路は大きく分けて2系統に分かれる。
第1のルートは、近隣の庭木や土中から飛来し、窓際や換気口から外から侵入するケースである。羽アリの飛翔能力は極めて低く、風に乗って数十メートルからせいぜい100メートル程度しか飛べない。しかし、網戸の数ミリの隙間やサッシの隙間、エアコンのドレンホースなどを経由して、光に引き寄せられる習性(正の走光性)によって室内の窓辺へ集まる。
第2のルートこそが最も警戒すべきシナリオ、すなわち建物の床下や柱、巾木の隙間から直接湧き出しているケースである。もし羽アリがサッシの外側ではなく、部屋の内側の幅木や畳の隙間、浴室のドア枠周辺から次々と這い出しているなら、それは外部からの飛来ではない。すでにその建物の基礎下や木部深くに数万頭規模の本巣が存在し、そこから群飛している証拠だ。
あわせて確認したいのがシロアリ被害初期症状の有無である。以下のような異常が家屋に見られないだろうか。
- 歩くと特定の床板や畳がフカフカと沈み込む、またはキシキシと異音が鳴る。
- 柱や巾木をドライバーの柄などで叩くと、ポコポコと中身のない空洞音が響く。
- 基礎コンクリートの立ち上がりや木部の表面に、土と排泄物で固められた茶色い筋状のトンネル(蟻道=ぎどう)が付着している。
- ドアや引き戸の建て付けが急に悪くなり、きっちり閉まらなくなった。
これらの兆候が1つでも重なっているなら、羽アリの出現は単なる偶発的な侵入ではなく、すでに構造躯体の侵食が進行している明白なSOSサインと受け止めるべきだ。