公式を丸暗記しようとするからこそ、数週間経つと忘却の彼方へ消え去ってしまいます。数学教育の現場取材でも「公式の導出過程を一度自力で紙に書いた生徒は、半年後でも正答率が8割を超える」という統計が示されています。鍵を握るのは、正三角形を真っ二つに割るという極めて単純な幾何的アプローチです。
頂点から底辺に向かって垂直な線(垂線)を下ろすと、正三角形は合同な2つの直角三角形に二等分されます。このとき生じる直角三角形の内角に注目してください。
正三角形の1つの内角は60°であるため、分割された直角三角形の角は「30度・60度・90度」になります。このとき、底辺の長さは元の正三角形の半分、すなわち $\frac{a}{2}$ です。斜辺の長さは元の正三角形の1辺そのものですから $a$ となります。
ここで、中学生の平面図形分野における最重要定理である三平方の定理(ピタゴラスの定理)を適用します。直角を挟む2辺の長さを $x, y$、斜辺を $z$ とすると、$x^2 + y^2 = z^2$ が成立します。
未知数である高さを $h$ とすると、以下の等式が成立します。
$$\left(\frac{a}{2}\right)^2 + h^2 = a^2$$
$$h^2 = a^2 - \frac{a^2}{4} = \frac{3}{4}a^2$$
高さ $h$ は正の実数であるため、両辺の平方根を取ることで導出が完了します。
$$h = \sqrt{\frac{3}{4}a^2} = \frac{\sqrt{3}}{2}a$$
この計算から明らかなように、「$\sqrt{3}$」という無理数は唐突に現れた魔法の数字ではなく、斜辺の2乗($1$)から底辺の2乗($\frac{1}{4}$)を引いた結果である「$\frac{3}{4}$」の平方根に他なりません。直角三角形の特別な辺の比である「$1 : 2 : \sqrt{3}$」の関係性を想起できれば、たとえ公式を完全に忘れていても、わずか15秒の計算で自力生成できます。