ウエイトトレーニングの現場において「バー=20kg」と認知されている背景には、国際パワーリフティング連盟(IPF)や国際ウエイトリフティング連盟(IWF)が定める世界共通の競技規格があります。一般に「オリンピックシャフト」と呼ばれるこの競技用バーベルは、全長2,200mm・重量20kg・グリップ部直径28〜29mm・スリーブ部直径50mmと厳格に仕様が定められています。大手フィットネスクラブの本格的なパワーラックや公式ベンチプレス台に常設されているシャフトの多くは、この男子公式仕様に準拠した20kg設計です。
しかし、取材現場で見落とされがちなのが女性用バーベル15kgの違いです。公式規格として認定されている女性用オリンピックシャフトは、全長2,010mm・重量15kg・グリップ径25mmと、手の小さな女性でも確実なフックグリップやサムアラウンドグリップが維持できるように細身かつ軽量に製造されています。近年はダイバーシティ推進や初心者への配慮から、一般のフリーウェイトエリアにもこの15kgシャフトが複数本混在して配備されているジムが珍しくありません。
そもそも、なぜ挙上重量の記録においてシャフトの自重を無視してはならないのでしょうか。バーベルシャフトの重さを含める理由は極めて明快であり、物理学的に重力に抗して移動させる「総質量(プレート重量+シャフト自重)」こそが生体に加わる機械的張力(メカニカルテンション)そのものだからです。プレートのみを足し算して「40kgを挙げた」と認識している場合、20kgのシャフトであれば実際は60kg、15kgのシャフトであれば55kgの負荷となっており、この5kgの認識ズレがフォームの崩壊や記録管理の破綻を招く直接的な要因となります。