鍋の前に立つ人を震え上がらせる油はねと破裂。このイカの唐揚げの爆発の理由は、食品内部に含まれる水分が100℃を超えて水蒸気に変化する際の「体積膨張」にあります。水が水蒸気になると、その体積は約1,700倍に急拡大します。通常の食材であれば衣の隙間から蒸気が抜けていきますが、イカの場合は組織の特異性が邪魔をします。
イカの胴体や足の表面には、強靭なコラーゲン線維からなる薄い皮が4層構造で重なっています。加熱によって外側の皮が瞬時に縮んで硬い膜を形成すると、皮と身の間に残された水分が逃げ場を失い、行き場のない高圧スチームカプセルが完成します。その内圧が限界を突破した瞬間、皮を破って周囲の高温油を巻き込みながら吹き飛ぶ――これが恐怖の油はね現象の正体です。
安全なイカの唐揚げの油はね防止を叶える鉄則は、蒸気の逃げ道をあらかじめ物理的に作っておくことに尽きます。具体的には、皮を取り除くか、表面に細かく切れ目を入れて膜を分断すること。さらに、油に入れる直前にキッチンペーパーで表面のドリップを徹底的に拭き取るだけで、家庭での破裂事故はほぼ完璧に防ぐことができます。