本作の誕生背景には、キャンディーズの音楽的成熟を支え続けたクリエイターたちの並々ならぬ熱量が存在します。『やさしい悪魔』でグループのイメージ変革を決定づけた吉田拓郎が作曲を担当し、はっぴいえんど出身で歌謡曲界に文学的革命を起こしていた松本隆が作詞、そして当代随一のアレンジャー馬飼野康二が編曲を手掛けました。
当時の制作現場を知る音楽プロデューサーや関係者の記録によると、吉田拓郎が持ち込んだデモテープのメロディは、フォークやニューミュージックの枠組に収まらない、跳躍の激しい転調を含む野心的な構成でした。拓郎自身、キャンディーズという類まれなコーラスグループのポテンシャルを誰よりも高く評価しており、「彼女たちならこの複雑なメロディラインを歌いこなせる」という絶対的な信頼のもとで筆を執ったと伝えられています。
そして、そのメロディに未来的な翼を授けたのが馬飼野康二の編曲です。イントロから響き渡るシンセサイザーのアルペジオ、唸るようなベースライン、ブラスセクションの切れ味鋭いアクセントは、当時欧米で勃興していたユーロディスコやスペース・ロックの息吹を巧みに吸収。職人技とも言える構築美によって、歌謡曲のフォーマットを軽々と打ち破る音響空間を創り上げました。