インド刺繍の深遠な魅力を紐解くうえで欠かせないのが、途方もない時間をかけて継承されてきた伝統技法だ。なかでも代表的なのが、先が鉤状になった特殊な針を用いてチェーンステッチを精密に打ち込む「アリー刺繍(Aari Work)」である。
もうひとつは、ムガル帝国時代から王侯貴族に愛されてきた「ザリ刺繍(Zardozi)」。金糸や銀糸、ビーズ、立体的な金属パーツを手作業で縫い付けるこの技法は、圧倒的な重厚感と気品を漂わせる。1メートルの生地を仕上げるのに数日、ときには数週間を要する作業。一枚の布の背景には、何世代にもわたって技を磨いてきた職人たちの静かな誇りが宿っている。