この街の変容を語る上で欠かせないのが、小さな商圏を自分たちの手で育てる「マイクロオーナーシップ」の動きだ。10坪にも満たない小スペースを間借りし、自分の得意分野だけで勝負する若手店主たちが相次いで参入している。クラフトビールの醸造所、古書とヴィンテージウェアを扱うアトリエ、夜だけオープンするスパイスカレー店。一見バラバラに見える店舗群だが、根底には「この街の質感を壊さない」という共通の美学が存在する。
「均質化されたショッピングモールにはない『手触り感』を求めて人が集まってきます」と、数年前に移住してカフェを構えた30代の店主は語る。アルゴリズムでレコメンドされるオンラインショピングに疲れ果てた消費者が、思いがけない偶然の出会いや店主との会話という生身の体験を求めて、この路地に足を運んでいるのだ。