ピルピル(スペイン語:Bacalao al pil-pil/タラのピルピル)は、豊かな食文化で世界中の美食家を惹きつけるスペイン・バスク地方を代表する伝統的な魚料理です。使用する主原料は、塩漬けにした鱈(塩鱈)、良質なエクストラバージンオリーブオイル、ニンニク、そして乾燥唐辛子(ギンダス)の4点のみ。調味料としての塩すら、塩抜きした鱈自体の塩分でまかなうのが本流とされています。
この料理の最大の特徴は、澄んだオイルで提供されるのではなく、白濁してとろみを帯びたマヨネーズ状のクリーミーなソースを鱈に絡めて食す点にあります。乳製品や小麦粉などの増粘剤は一切使用しません。鱈の皮と身の間に豊富に含まれるコラーゲンが加熱によってゼラチン化し、鍋を小刻みに揺すり続けることでオリーブオイルの脂肪球を取り込み、見事な乳化状態を作り出します。
保存食として重宝された塩鱈をいかに美味しく食べるかという、過酷な海洋環境と向き合ってきたバスクの漁師たちの知恵が、今日の洗練されたガストロノミーへと昇華した歴史的背景を持っています。