彼の真骨頂は、観客の予想を裏切る静かな恐怖の演出にある。数々のサイコサスペンス映画において、彼が画面に登場するだけで場の空気が張り詰める。声を荒らげることなく、ただ普通に会話しているだけなのに、どこか致命的なズレを感じさせる不気味さ。この「日常の歪み」を表現させたら右に出る者はいない。
普通のおじさん、優しい隣人、温厚な上司。そうした記号的な役柄であればあるほど、裏返したときの狂気が冴え渡る。演じるキャラクターの背景や生い立ちを緻密に構築し、カメラが回っていない瞬間すらその人物として呼吸する。その徹頭徹尾たるプロフェッショナリズムが、観る者に強烈なリアリティを突きつけるのだ。