なぜ先に混ぜるだけで、これほどまでに味が変わるのか。最新の調理科学がそのミクロの構造変化を解き明かしている。
大豆の発酵過程で納豆菌が生み出す粘り気の主成分は、アミノ酸の一種であるグルタミン酸が長鎖状に結合した高分子物質「ポリグルタミン酸」と、多糖類の一種であるフルクタンだ。タレを含まない状態でかき混ぜると、このポリグルタミン酸が立体的な網目構造を形成し、大量の空気を包み込む。
この空気をたっぷり含んだ細かな泡が舌表面の味蕾(みらい)全体に行き渡ることで、脳は通常よりも強い甘みと旨味を感じ取る。逆に、最初にタレや醤油などの水分を入れてしまうと、ポリグルタミン酸の長鎖構造が切断され、網目が崩壊してサラサラの液状になってしまう。つまり、旨味の立体カプセルを作る前に水分で薄めてしまう行為こそが、旨味を感じにくくさせていた最大の原因なのだ。