このジャンルを語る上で欠かせないのが、オダトモヒトによる漫画作品『古見さんは、コミュ症です。』である。『週刊少年サンデー』(小学館)で連載され、爆発的なヒットを記録した本作は、学園ラブコメディの金字塔として「話したいのに話せない」という葛藤を極上のエンタメに昇華させた。
主人公の古見硝子は、誰もが見惚れる容姿端麗な美少女でありながら、重度のコミュニケーション障害を抱えている。彼女がノートに震える手で文字を書き、想いを伝えようと必死になる姿は、読者の胸を締め付ける。言葉を口にできないもどかしさが、かえって彼女の純粋さを際立たせるのだ。
小学館が誇る緻密なヒットメイキングと、日常の些細な表情を繊細に捉える演出スタイルは、沈黙が持つ感情のグラデーションを見事に表現してみせた。王道のラブコメディでありながら、沈黙そのものをヒロインの武器に変えた点において、本作の功績は極めて大きい。