物語の軸となるのは、誰もが見惚れる美貌を持ちながら自己肯定感の乏しい笠原蘭(かさはら らん)と、名門大学のオーケストラでカリスマ的な人気を誇る指揮者・茂実星矢(しげみ せいや)、そして蘭の大学時代からの唯一無二の親友を自任する石破留利絵(いしば るりえ)の3人です。
大学のオーケストラサークルで出会った蘭と星矢。才能あふれる星矢に惹かれた蘭は、彼からの激しいアプローチを受けて恋に落ちます。しかし、星矢にはすでに婚約者が存在していました。「妻とは別れる」「お前だけが本物だ」という甘い言葉を信じ切った蘭は、星矢の都合の良い愛人として、金銭的にも精神的にも徹底的に搾取される泥沼の不倫関係へと足を踏み入れます。
周囲がどれほど忠告しても、蘭の耳には届きません。星矢の理不尽な暴力や金銭の無心、度重なる裏切りすらも「彼を救えるのは自分だけ」と美化し、自らの人生を削りながら尽くし続けます。第一部「恋」では、外部から見れば狂気の沙汰でしかない関係が、蘭自身の主観においては崇高でドラマチックな純愛として語られていきます。