収監先となったのは、主として初犯の重罪者や暴力団関係者などが収容される国内最大規模の行刑施設・府中刑務所でした。そこで山本氏が命じられたのは、高齢や心身の障害によって自立した生活が送れない受刑者たちの身の回りの世話を行う「養護係(介護係)」の任務でした。
過密収容と厳格な規律が支配する塀の中で、彼が目撃したのは言葉を失うような惨状でした。失禁を繰り返す高齢者、重い知的障害を抱えて自らの状況すら把握できない受刑者、理不尽な暴力に怯える人々――。福祉の手から零れ落ち、セーフティネットの機能不全によって刑務所に行き着いた人々の姿でした。
出所後、山本氏は獄中で書き留めた日記や記憶をもとに、手記『獄窓記』(新潮社)を発表します。政治家から一転して囚人となった日々の内省にとどまらず、行刑施設の生々しい実態と制度の歪みを克明に活写した同書は、第2回新潮ドキュメント賞を受賞。後にテレビドラマ化されるなど、日本中に大きな衝撃を与えました。