今大会の審査室では、過去数十年で最も激しい議論が巻き起こったという。伝統的なベル・カント(美しい歌唱)スタイルのルバートを重んじる旧来の支持派に対し、若手審査員や気鋭の音楽批評家たちは、より構造的で大胆なダイナミクスを容認する姿勢を示した。時代は変わった。
打鍵速度や技術的な正確さはもはや当たり前の前提となり、求められているのは「なぜ今、ショパンなのか」という問いに対する演奏者の回答だ。弱音(ピアニシモ)の余韻に込められた情念の深さ、あるいは舟歌(バルカローレ)で見せた微細なペダリングの妙など、細部に宿る精神性こそがスコアを分けたのだった。