ネット上の掲示板や一部のSNSコミュニティでは、柴那典氏に対して「大手事務所やメジャーレーベルに配慮した提灯記事が多いのではないか」「ヒットチャートの現状を肯定しすぎている」といった批判的な声が散見されることがあります。しかし、これは柴氏の批評スタンスに対する典型的な誤解です。
柴氏は作品を攻撃してカタルシスを得るタイプの批評家ではなく、「なぜその現象が起きたのか」というシステムや生態系を解き明かす観察者・記録者の役割を自覚的に担っています。かつて『ヒットの崩壊』を上梓した際にも、握手券商法や接触イベントに依存していた当時のAKB48商法をただ感情的にバッシングするのではなく、オリコン集計の構造的欠陥や、実態としてファンダム消費に閉じた音楽市場の歪みをデータに基づいて冷静に指摘しました。
社会学でいう「機能分析」の視点を持ち、目に見える現象の背後にある力学を冷徹に捉えているからこそ、特定の勢力に忖度しているかのように表面的に見える局面があるに過ぎません。現場の一次証言を丹念に集め、数字と事実に基づいて議論を組み立てる手法こそが、柴氏の批評的リアリズムの真髄です。