「アワビの肝には毒がある」という話を耳にして不安を覚える人は少なくありません。水産庁や食品安全委員会の学術資料によると、アワビの肝(中腸腺)には春先(2月〜5月頃)、海藻の葉緑素由来である光増感物質「ピロフェオホルバイドa」が蓄積することが確認されています。これを人間が大量に摂取した状態で直射日光(紫外線)を浴びると、ヒスタミン様症状や皮膚炎、浮腫といった「アワビ光過敏症」を引き起こすリスクがあります。
ただし、過度な恐れは不要です。毒性が懸念されるのは春先の一部海域で捕獲された特定の大型個体に限られ、加熱調理によって毒性が完全に失活するわけではないものの、一般的な食用量(1〜2個分の肝)であれば重篤な中毒に至るリスクは極めて低減されます。安全を期すための識別ポイントは以下の通りです。
- 中腸腺(肝本体):緑色(雌)または白黄褐色(雄)の三日月状部位。鮮度が良ければ濃厚な旨味の塊であり、酒煎りや肝醤油に最適。
- 口器(クチバシ):身の先端にある硬い組織。毒はないものの食感が著しく悪いため必ず切除。
- 砂袋・消化管:肝の周りにある黒ずんだ細い管。砂を噛んでいる可能性があるため、指でしごいて内容物を洗い流す。
春先のアワビの肝を生食することは避け、必ず酒や醤油とともにしっかりと火を通す調理法を選択するのが衛生管理上の鉄則です。