ファンの間では時折、「善逸が単独撃破できたのだから、累の兄はそこまで強くなかったのではないか」という過小評価が見受けられます。しかし、戦闘の詳細と作中設定を丹念に検証すると、その見解が大きな誤解であると判明します。
第一に、累の兄と対峙した一般隊士たちの生存率は事実上「ゼロ」でした。毒針の攻撃範囲、木々の間を立体的に飛び交う人面蜘蛛の索敵網、そしてかすり傷一つで数十分後に身体が溶けて蜘蛛化する即死級の毒性。炭治郎たちと同期の村田さんを含む隊士たちも、この毒殺トラップを単独で突破することは不可能でした。
第二に、善逸が勝利できた最大の理由は、「雷の呼吸という極限のスピード特化型剣術」と「毒が心臓に到達する刹那の捨て身の覚醒」という、極めて限定的な特効条件が揃った点にあります。もし善逸の抜刀速度がコンマ数秒でも遅れていれば、全身に毒液を浴びて相討ち、あるいは敗北していたことは間違いありません。
累の兄が敗北に至った真の要因は、実力不足ではなく「弱者をいたぶることに溺れた慢心」と「累の庇護下に安住していた精神的脆弱さ」にありました。初見殺しの毒殺能力という点において、累の兄は一般階級の隊士にとって悪夢以外の何物でもない強敵だったのです。