ネット上のレビューやSNSの一部では、「80年代シティポップのブームに乗っかったパロディではないか」という声が散見されることがあります。しかし、この見方は楽曲の本質を見誤っています。
サカナクションが試みたのは、単なる過去の意匠の模倣(ノスタルジーの消費)ではありません。1980年代の日本のスタジオミュージシャンたちが築き上げた職人芸的なアンサンブルを、2000年代以降のエレクトロニック・ミュージックの解像度で再構築するという、極めて批評的なアプローチです。事実、ベースラインの輪郭やキックドラムのアタック感は完全に現代のクラブミュージック仕様であり、ヴィンテージシンセサイザーの音色と最新のデジタルプロセッシングが高度に融合しています。
「懐かしいのに、今まで聴いたことがない」。この一見矛盾する聴取体験こそが、本作が世代を超えて熱烈に支持される最大の要因です。