キスショットの原点は、約600年前の中世ヨーロッパに存在した小国の貴族令嬢「アセロラ姫」です。当時の彼女は「うつくし姫」と称され、その美貌は見る者すべてを狂わせる呪いそのものでした。
彼女の前に立った人間は、自らの命を捧げることこそが無上の幸福であると錯覚し、次々と自害して自らの心臓を彼女へ差し出しました。国中の人々が自ら命を絶ち、城の周りには死体の山が築かれるという地獄絵図の中で、うつくし姫はただ絶望と孤独に打ちひしがれていたと『業物語』に収録された「あせろらボネット」で克明に記されています。
耐え難い惨劇に終止符を打つべく、彼女は自らを食い殺してくれる存在を求めて放浪し、純血の吸血鬼「デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター」と邂逅します。しかし、スーサイドマスターすらも彼女の美しさに毒され、殺すこと能わず、彼女を眷属として吸血鬼化させる道を選びました。この時に授けられた真名こそがキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(「心の下に刃を隠すアセロラ」の意)です。
人を超越した怪異の王となった彼女ですが、約400年前に日本へ渡航した際、最初の眷属となる武士・死屍累生死郎(ししるいせいしろう)を生み出したことで再び深い悲劇に見舞われます。太陽の光によって灰燼と化しそうになった彼女を救うため、生死郎は身を捧げましたが、吸血鬼としての生き方に耐え兼ねて太陽に身を投じ自害しました。この「初代眷属の喪失」は、彼女の魂に修復不能な亀裂とトラウマを刻み込むことになります。