妊娠初期の話題で必ずと言っていいほど耳にするのが妊娠9週の壁というキーワードです。医学的な正式用語ではないものの、多くの産科臨床医が共通して意識する「ひとつの重大な通過点」であることは間違いありません。なぜ妊娠9週がこれほどまでに注目されるのでしょうか。
妊娠初期における全流産のうち、実に約80%以上は妊娠8週までに発生するとされています。全妊娠における流産確率は約15%前後ですが、超音波検査で妊娠9週に胎児心拍が力強く確認できた場合、その後の流産確率は約2〜3%以下へと劇的に低下します。赤ちゃんの主要な臓器(心臓、脳、消化器、四肢など)の原基が作られる「器官形成期」が妊娠9週末で概ね完了し、染色体異常による初期淘汰の危機を大きく脱したことを意味するためです。
しかし、この時期に注意すべき症状が存在するのも事実です。代表的なものが妊娠9週の下腹部痛や妊娠9週の出血原因の見極めです。子宮が急速に大きくなることで靭帯が引っ張られる「円靭帯痛」や軽度の張りであれば生理的な変化ですが、茶褐色から鮮紅色の出血、激しい痛みを伴う場合は「絨毛膜下血腫」や「切迫流産」の疑いがあります。自己判断で様子を見ず、直ちにかかりつけ医へ連絡して指示を仰ぐ体制を整えておくことが極めて重要です。