創傷治療の専門的見地から導き出される、フィブラストスプレーを「積極的に活用すべきケース」と「使用を避ける・慎重になるべきケース」の境界線は明確です。
◎ 積極的に処方を推奨できるケース
- 壊死組織が除去され、感染のない「赤色期」の褥瘡(ステージIII〜IV相当で深さのある潰瘍)
- 下肢静脈瘤や血行障害に伴う難治性の下腿潰瘍で、基礎疾患の血流管理が行われている症例
- 自家植皮術後の採皮部創傷や重度熱傷潰瘍で、急速な上皮化を急ぎたい局面
- 患者本人または同居家族・訪問看護が「1日1回の洗浄・冷蔵管理・確実な噴霧」を規律正しく実行できる環境
▲ 処方を回避・慎重に見極めるべきケース
- 創面に悪性腫瘍の疑いがある患者(完全禁忌)
- 創部に激しい感染兆候(熱感、排膿、悪臭、蜂窩織炎)が存在する急性感染期(まず抗菌治療が最優先)
- 黒色壊死組織が創底を覆い尽くしている未処置の創傷(浸透せず無効)
- 認知症の独居高齢者など、温度管理(2〜8℃)や噴霧手技の自己管理が極めて困難な在宅環境
長期にわたる在宅介護や褥瘡ケアにおいて、治らない傷の存在は患者本人の苦痛だけでなく、介護する家族の精神的負担や「治せないことへの自責の念」という心理的消耗を引き起こします。フィブラストスプレーは、そうした停滞した療養環境を打開する強力な一手となり得ますが、それを生かすも殺すも「適切なタイミングでの導入」と「厳格なプロトコル遵守」にかかっています。