アニメ開始から四半世紀近くが経過した現在、タチバナ家を演じる声優陣はどのようなキャリアを歩んでいるのでしょうか。各キャストの現在の活動状況と、現場で語り継がれるアフレコの裏話に迫ります。
タチバナ家の母親役を務める渡辺久美子さんは、現在も舞台や吹き替え、ナレーションなど多方面で活躍を続けています。渡辺さんといえば『ケロロ軍曹』のケロロ役をはじめ、エネルギッシュで唯一無二のキャラクターボイスで知られますが、母役においては「日常のリアリティとアニメ的デフォルメの究極のバランス」を追求したと当時のインタビュー等でも振り返っています。情熱の赤い情熱歌(「情熱の赤い薔薇〜」)を鼻歌で歌うシーンのアドリブ感は、渡辺さんの天性のリズム感の賜物です。
無口でマイペースなお父さん役を演じる緒方賢一さんは、声優界を代表する大ベテランです。『名探偵コナン』の阿笠博士役でも親しまれていますが、タチバナ家の父役では「言葉を発しない演技」の凄みが際立ちます。「ハッ」「フン」「パチン(新聞をめくる音)」といったわずかな息遣いや擬音に近い表現だけで、家族を包み込む父親の存在感を表現し切る技量は、まさに人間国宝級と業界内でも絶賛されています。
長女・みかん役の折笠富美子さんは、透明感のある美声と確かな演技力で、現在も数多くのアニメ作品や音楽活動で第一線を走り続けています。みかんが抱く「思春期特有の母親への恥ずかしさ」や「少しドジでおおらかな性格」を、過剰な演技に頼らず等身大の高校生として演じ分けました。
そして弟・ユズヒコ役の阪口大助さんは、『銀魂』の志村新八役に代表されるキレ味鋭いツッコミ芸の大家として知られます。しかし『あたしンち』では、激しいツッコミをあえて抑え、姉や母の奇行に静かに困惑する「思春期男子のリアルな内向性」を見事に表現。阪口さん本人の知性的な語り口が、ユズヒコのクレバーなキャラクター性と見事に合致しています。