歩行訓練士(歩行指導員)の指導現場において、最初に徹底して訓練されるのが「2点タッチ法(ツーポイントタッチ法)」と「スライド法(コンスタントコンタクト法)」という2大基本技術です。
2点タッチ法は、肩幅よりわずかに広い幅(約5〜10cm程度外側)で、杖先(チップ・石突)をリズミカルに左右の地面に軽く接触させる技術です。重要なのは歩行の足運びとの連動であり、「右足を前に踏み出す瞬間に杖先を左側に落とし、左足を前に踏み出す瞬間に杖先を右側に落とす」という逆位相のリズムを刻みます。これにより、次に足を踏み出す位置の安全(段差や落下物、溝の有無)を半歩先で確認しながら前進することが可能になります。杖を高く振り上げすぎると上空の突起物に気付かず危険であるため、地面から数センチの高さを保ちながらアーク(円弧)を描く技術が求められます。
一方のスライド法は、杖先を地面から離さず、路面を滑らせるように左右へ振る操法です。路面の微妙な傾斜や亀裂、マンホールの縁、そして点字ブロック(視覚障害者誘導用ブロック)の凹凸を途切れなく捉え続けることができるため、凹凸の多い歩道や駅構内での移動で威力を発揮します。路面との摩擦が大きくなるため、先端部に回転式の「ローラーチップ」を取り付けて滑りを滑らかにする利用者が多く見られます。
駅ホームや階段における動作には、命に関わる厳格な手順が存在します。階段を昇る際は、手すりを片手で把持しつつ、白杖を短めに持って杖先を1〜2段上の蹴込み(垂直面)や段鼻(角)に当て、段差の高さと奥行きを測定しながら進みます。降りる際は、杖先を下の段の縁に軽く落として次の踏み面を常に確認し、足の踏み外しを防止します。
鉄道駅のホームにおいては、線路側に突起が並ぶ「内方線付き点字ブロック」の存在が極めて重要です。利用者は白杖と足裏の感覚でこの突起を判別し、どちらが安全なホーム内側であるかを把握しています。電車の乗降時には、ドアが開いた瞬間に白杖の先端でホームと車両床面の「隙間」と「段差の高低」を瞬時に探り当ててから足を踏み入れます。