デザート作りで最も頻発するトラブルが「フルーツを入れたら一晩経っても液体のまま」という怪奇現象だ。原因は、果実に潜むタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)にある。
生のパイナップル(ブロメライン)、キウイ(アクチニジン)、パパイア(パパイン)、イチジクをそのままゼラチン液に投入すると、酵素がゼラチンのタンパク質鎖を容赦なくズタズタに切り刻む。結果として網目が形成されず、二度と固まらなくなる。これを防ぐには、果肉をあらかじめ加熱して酵素を失活させるか、缶詰の果実を使う以外に手はない。
だが、寒天にその弱点はない。寒天は多糖類であってタンパク質ではないため、生パイナップルや生キウイの酵素を一切意に介さない。果実を生のまま閉じ込めたフレッシュなゼリーを作りたいなら、寒天(あるいはアガー)の右に出るものはない。ただし寒天は酸に弱いため、レモン果汁などの強い酸味は火を止めた直後に加えるという別種の配慮が求められる。