店頭の巨大な鉄鍋で豪快に煮込まれる「ホルモン丼」は、きつねやの代名詞とも呼べる一杯です。じっくり煮込まれた牛の小腸やフワ(肺)は、八丁味噌ベースの秘伝タレが芯まで染み渡り、深い赤褐色に輝いています。炊きたての白米の上に惜しみなく盛られ、仕上げに刻みネギがたっぷりと添えられたそのビジュアルは、長年市場で働く人々の胃袋を支え続けてきた歴史そのものです。
実際に口へ運ぶと、見た目の濃厚さとは裏腹に脂のしつこさは感じられず、味噌の奥深いコクと肉の旨みが口いっぱいに広がります。ホルモン特有の臭みは徹底的な下処理によって完全に消し去られており、柔らかさと適度な弾力が絶妙なバランスを保っています。多くの常連客が推奨するように、トッピングの温泉玉子(半熟卵)を絡めることでマイルドな円熟味が加わり、一杯の完成度はさらに極まります。
長蛇の列に並んでまで食べる価値があるのかという疑問に対し、編集部の検証結果は「大いに価値あり」です。他店では決して真似できない半世紀以上継ぎ足された味噌ダレの深みは、築地を訪れたなら一度は体験すべき唯一無二の食体験といえます。