日本の消防行政を理解するうえで最も重要な基礎知識が、「国と自治体の役割分担」です。消防組織法第1条および第9条の規定により、日本における火災の予防・警戒・鎮火、そして国民の生命と財産の保護は、原則として市町村(基礎自治体)の責任において行われる「自治体消防制度」が採られています。
総務省消防庁の役割は、自ら消火活動や救急搬送を行うことではなく、国全体の消防防災行政を統括し、法制度の整備、基準の設定、大規模災害時の全国的な調整を行うことにあります。総務省の外局として設置されており、英語表記は「Fire and Disaster Management Agency(略称:FDMA)」です。
一方で、街で見かける消防署は、市町村が設置する「消防本部」に属しています。消防庁の公式統計によると、全国には726の消防本部が存在し、約16万人の消防職員と約83万人の消防団員が日夜現場の第一線で活動しています。この「現場で活動する地方公務員組織」と「制度と広域連携を司る国家行政組織」の棲み分けこそが、総務省消防庁と消防本部の違いにおける核心です。
また、混同されやすい代表例が「東京消防庁」です。東京消防庁は東京都の機関(特別区23区および受託した多摩地域の市町村を管轄)であり、実動部隊を擁する自治体消防本部の一つに過ぎません。国の機関である総務省消防庁とはまったく別の組織です。
総務省消防庁の組織図を見ると、長官を筆頭に次長、審議官が置かれ、内部部局として「総務課」「消防・救急課」「予防課」「危険物保安室」、そして国民保護や大規模災害を担当する「国民保護・防災部(防災課、参事官等)」で構成されています。実動部隊を持たない少数精鋭(約200名規模)の政策集団であることが分かります。