美味しいイカ焼きを作るうえで、加熱前の下処理は味と食感を決定づける最も重要な工程です。丁寧な下処理を行うことで、特有の生臭さを消し去り、タレの絡みを劇的に向上させることができます。
丸ごとのイカ(スルメイカなど)を扱う場合、まずは胴の内側に指を入れて軟骨と内臓(ワタ)の結合を外し、足を持ってゆっくり引き抜きます。胴体内部に残った軟骨や汚れを水洗いし、水気をペーパータオルで徹底的に拭き取ります。水分が残っていると、焼いた際に「蒸し焼き」状態になり、香ばしさが生まれません。
柔らかく仕上げるための最大の秘訣が「隠し包丁」です。胴体の表面(皮側)に、2〜3ミリ間隔で斜めに細かく格子状の切り込みを入れます。これにより、熱による筋膜の急激な縮みを防ぎ、繊維をあらかじめ切断しておくことで、噛み切りやすい柔らかな食感が生まれます。また、胴体の両サイドに1〜2センチ間隔で横方向の切れ目を入れておくと、焼いた際の反り返りや丸まりを完全に防ぐことができます。
皮については、香ばしい屋台風の姿焼きやグリル焼きを目指すなら「皮付き」、繊細で極上に柔らかい食感を求めるならペーパータオルを使って剥ぎ取るのがおすすめです。下処理の仕上げに酒(大さじ1)と微量の塩を振って5分ほど置き、浮き出た水気を拭き取ることで、余計な臭みが完全に抜けて旨味が凝縮します。