家庭で「学校の水彩絵の具を切らしてしまったから、手元にあるポスターカラーで代用させよう」と考える保護者は少なくありません。結論から言えば、物理的な代用は可能ですが、授業内容によっては推奨されません。
小学校の図工科で指定される画材セットには、多くの場合「サクラマット水彩」や「ぺんてるエフ水彩」といった「半透明水彩絵の具」が採用されています。これは、水の量を多くすれば透明水彩のように軽やかに滲み、水の量を減らせば不透明水彩のようにしっかりと着色できるという、教育的配慮に基づいた万能設計が施されているためです。
一方、ポスターカラーで風景画を描こうとすると、以下の壁に直面します。
- にじみ・ぼかしの表現が極めて難しい:水を多く含ませすぎると顔料が均一に広がる前に紙の上で濁り、水彩特有のみずみずしいグラデーションが作りにくい。
- 厚塗りによるひび割れ:ポスターカラーは乾燥後の塗膜に柔軟性が少ないため、画用紙を折り曲げたり、絵の具を厚く盛りすぎたりすると表面がパラパラと剥離するリスクがある。
逆に、夏休みの防火ポスターや交通安全ポスターのように、「文字をはっきり目立たせたい」「遠目からでも明瞭に見えるスローガンを描きたい」という用途であれば、水彩絵の具よりもポスターカラーを使用したほうが格段に美しく、インパクトのある仕上がりになります。代用を検討する際は、描く対象が「写生・風景」なのか「デザイン・ポスター」なのかを見極める必要があります。