長期にわたる幼児の失踪事件が報じられる際、海外の事例と比較して「第三者による略取・誘拐や隠匿の可能性はないのか」という議論が巻き起こることがあります。実際に国際的なニュースとして大きな関心を集めたのが、米ニューヨーク州の事案です。2019年に当時4歳で忽然と姿を消したペイズリー・シュルティスちゃんは、行方不明となってから2年以上の月日を経て、実の祖父宅にある階段下の秘密の小部屋から無事発見・保護されました。
この事件は、親権を失った実の両親による計画的な「親族間連れ去り」であり、女児は外界との接触を完全に断たれた環境で匿われていました。この劇的な発見劇は、「何年経過しても諦めてはならない」という希望を与えた一方で、失踪事案の背景には事故だけでなく複雑な家庭内の対立や親権問題が隠されている場合があるという事実を世界に知らしめました。
対照的に、日本国内で発生する未就学児の突発的な行方不明事案では、統計上、第三者による計画的な連れ去りよりも、単独での迷子から水難事故や転落事故に至る割合が圧倒的に高いことが警視庁および警察庁の過去事案分析から判明しています。特に河川や用水路が生活圏に近接している地域では、水音や動植物に惹かれて吸い寄せられるように水辺へ接近し、足を滑らせる事故が後を絶ちません。海外の特異な連れ去り事件と混同し、陰謀論的な推論に傾倒することは、現場で救出を待つ小さな命のリスクを見誤る原因となります。