このシングルが歴史的な名盤として語り継がれている理由は、両A面シングルとして「五月の蝿」と同時に収録された楽曲が「ラストバージン」であった点にあります。「ラストバージン」は、「生まれて初めての体験を君とすべて分かち合いたい」と歌い上げる、音楽史に残るほど純度の高いラブソングです。
同じアーティストが、同じ時期に、まったく真逆の感情を剥き出しにした2曲を同時に世に放ったという事実は、表現者としての狂気と誠実さを物語っています。光と闇、狂気と純愛。この二面性は、激しく求め合いながらも激しく傷つけ合っていた当時の二人の関係性をそのまま映し出した鏡でした。
音楽ライターや当時の関係者の間では、「相手をあまりにも深く愛しているからこそ、裏切られたと感じた瞬間にその反作用として『五月の蝿』のような憎悪が生まれる」と評されました。どちらか一方だけが真実なのではなく、両方とも野田洋次郎の中に実在した偽らざる真実だったのです。